植物編 §105 エゾニュウ Angelica ursina Benth. et Hook.
(1)siw-kina シウキナ [siw(にがい)kina(草)] 葉柄 ⦅北海道、樺太⦆
(2)poro-kutu ポロクトゥ [poro(大きい)kutu(筒状茎)] 茎 ⦅白浦⦆⦅A十勝⦆
(参考)これを取って来たら、まず皮をむいて味を見て、比較的にがくないのを選んで生で食べた。魚油を付けて食うと苦くないとも言っていた。苦いのは水にひたしておいて汁の実にして食べた。皮をむく時、根もとの方の切口へ小刀で十文字に切れ目を入れ、それを自分の口の近くへ持って来て「フッサ!」hussa ! と言って呼気を吹きかけ、それから、
e-siw ko anakne お前もし苦かったら
asinru orun 便所の中へ
e-omare-as 突っ込んで
kusu ne na ! やるぞよ!
とか、あるいは、
e-siw ko anakne お前もし苦かったら
e-otompuye お前の尻の穴
ku-poypoye ほじくって
kusu ne na ! やるぞよ!
とかいう文句を唱えて、それから、
siw kina にがくさ
toopen あまくなぁれ
kina くさ
toopen あまくなぁれ
と歌いながら皮をむく。そうすれば決して苦くないと信じていた(幌別、白老)。この草は、生える土地によって苦みの強いのとそうでないのとあり、幌別では川の西にあるのは苦みが少ないとされていた。
樺太の白浦では、この花の咲く頃までにマスがとれなければ、その年は不漁とされていた。