アイヌと自然デジタル図鑑

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アイヌ語辞典

植物編 §118 イブキボウフウ Seseli Libanotis Koch var. daucifolia Franch. et Sav.

(1)upew ウペウ 根 ⦅北海道各地⦆

(2)umew ウメウ 根 ⦅美幌
 注1.――カワラボウフウをkimun-upew(山のウペウ)という所がある。千島で、有用植物の一つにupey(upei)というものがある(鳥居龍蔵、千島アイヌ、p.166)。それなども関係があろう。
 注2.――カラフトニンジンをumew-kina(ウメウ草)という所がある。そのウメウもやはり関係があるだろう。→§111参照。
(参考)辞書に次のごとき説明がある。「散形科の草本の一で強い薬臭を有する。薬剤として盛んに用いられ、あらゆる病気に効くと言われている。……流行病の際にこのupeuは盛んに探し求められるが、それはこのものが病気に対する一大予防薬であると考えられ、また一種の護符に役立つと言われているからである。私は彼らがそれを噛んでいるのを何度も見たし、また病気を近づけぬために小屋の中にそれを吊るしているのも見た。天然痘がひどく流行している際であったが、一匹の犬の首輪にそれを幾つか結びつけて小屋の周囲を追い回しているのも見た。この植物は随時お茶や水の代わりに飲用され、しかも愛用されることが多い。普通にはこの草を熱湯に浸して煎汁を作る。風邪の際もそうして服用する。老人の中には煙草の味をよくするためにこの根を少々混ぜるものもある」。
 この記述にもある通り、この植物の根は、広く薬用に供され、特に風邪・腹痛・二日酔い等の特効薬と考えられている。風邪の際に煎じて飲む他に、粥の中に入れて食べた。疱瘡の際ももちろん用いたが、すべてその強烈な臭気が病魔を撃退するという信仰に基づいているのである。

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