植物編 §123 タラノキ Aralia elata Seem.
(1)ayus-ni アユシニ [ay(とげ)us(多くある)ni(木)] 茎をいう ⦅幌別⦆
(2)ayus-ni アユシニ [とげ・多くある・木] 茎をいう ⦅荻伏⦆
(3)aus-ni アウシニ [<ay-us-ni とげ・多くある・木] 茎 ⦅荻伏、様似⦆
(4)siayusni シアユシニ [si(本当の)ayusni(とげ多く生えている木)] 茎 ⦅幌別⦆
(5)aykoroni アイコロニ [ay(とげ)koro(もつ)ni(木)] 茎 ⦅真岡⦆
(6)citcakkereni チッチャッケレニ [cit(膣に)sapkere(味を見させる)ni(木)] 茎 ⦅美幌⦆
注1.――屈斜路でもそういう名称があったらしく、更科源蔵氏によれば「別にチャッチャッケレニという名もあるが、そんな事があったのかなかったのか知れないが、ちょっとここで日本語に訳しかねる)とある(コタン生物記、p.20)。
(7)enenkeni エネンケニ [en-en-ke(とげ・とげ・している)ni(木)] 茎をいう ⦅長万部、穂別、平取⦆
(8)horkaayusni ホルカアユシニ [horka(逆に)ay(とげ)us(多く生えている)ni(木)] 茎をいう ⦅美幌、屈斜路⦆
(9)sewatni セワッニ [sewat(ウドの新芽)ni(木)] 茎をいう ⦅近文、名寄⦆
注2.――この木の若い芽はウドのそれに煮ているのでその名がある。
(10)sewas-ni セワシニ [同上] 茎をいう ⦅美幌⦆
(11)sewahni セワハニ [<sewat-ni] 茎をいう ⦅真岡⦆
(12)suwatni スワッニ [suwat(炉かぎ)ni(木)] 茎をいう ⦅A十勝⦆
注3.――この木を炉かぎの材に用いたので民間語源説によってこういう形が生じたのであろう。
(参考)この木の若芽を取って食べた。胃痛の時には、根を取って煎じて飲んだ。この木の茎面には、鋭い刺が密生しているので病魔が恐れて近づかぬと信じ、悪疫流行の際は、この木の枝を戸口や窓口や分かれ道や水汲み路の所などに立てておく(美幌、名寄)。この木はまっすぐで節がなく、おまけに軽いのでよく物干しざおに使った(幌別)。