植物編 §137 マタタビ Actinidia polygama Miq.
この植物の名は、果実に負うている。アイヌは、この植物については、もっぱらその果実を利用したからである。
(1)matatampu マタタンプ 果実 ⦅長万部、幌別、穂別⦆
注1.――mata(冬)tampu(日本語「たぶ」)、冬に木からぶら下がっている「つと」の義か。
(2)natatampu ナタタンプ 果実 ⦅白老⦆
(参考)この果実は、サルナシに比してまずいので、「鳥の」とか、「祖父の」とか、「悪魔の」とか、限定詞がつく。
(3)cikap-kutci チカプクッチ [cikap(鳥)kutci(サルナシ)] 果実 ⦅荻伏⦆
(4)ekasi-kutci エカシクッチ [ekasi(祖父)kutci(サルナシ)] 果実 ⦅有珠⦆
(5)kamuy-kutci カムイクッチ [kamuy(悪魔)kutci(サルナシ)] 果実 ⦅様似⦆
注2.――この場合のkamuyは「神」と訳しては当たらない。「ウェンカムイ」wen-kamuy(悪い・神)、「ニッネカムイ」nitne-kamuy(同)の義である。茎をさす時は、それにpunkarをつけて言う。
(6)matatampu-punkar マタタンププンカル [マタタビの生える蔓] 茎 ⦅幌別⦆
(7)natatampu-punkar ナタタンププンカル [マタタビの生える蔓] 茎 ⦅白老⦆
(8)cikapkutci-punkar チカプクッチプンカル [マタタビの生える蔓] 茎 ⦅荻伏⦆
(9)kamuykutci-punkar カムイクッチプンカル [マタタビの生える蔓] 茎 ⦅様似⦆
(10)ekasikutci-punkar エカシクッチプンカル [マタタビの生える蔓] 茎 ⦅有珠⦆