植物編 §142 クロウメモドキ Rhamnus japonica Maxim.
(1)yuk-numa ユクヌマ [yuk(鹿)numa(毛)] 表皮の下にある鹿毛に似た繊維 ⦅美幌⦆
(2)yuknuma-o-ni ユクヌマオニ [yuknuma(上記の繊維)o(入っている)ni(木)] 茎 ⦅美幌、屈斜路⦆⦅A十勝・石狩・沙流⦆
(3)kiski キシキ [kiski(獣毛)] 表皮の下にある獣毛に似た繊維 ⦅礼文華⦆
(4)kiskinni キシキンニ [kiski(獣毛)-ni(木)] 茎 ⦅長万部、礼文華、虻田、幌別⦆⦅A千歳⦆
注.――あるいはkiski-nu-ni(獣毛・持つ・木)だったかもしれぬ。
(参考)この木は、表皮の下に鹿毛に似た粗剛な繊維を持ち、アイヌはそれを取って、打ち身などの際の湿布に用いた(美幌)。そこでその繊維がまず彼らの関心を引き、それが鹿の毛に似ているところから「ユク・ヌマ」(鹿・毛)あるいは「キシキ」(獣の毛)と称せられたのである。木の名は、その鹿の毛あるいは獣の毛のとれる木という意味でつけられ、いわば二次的に生じた名称である。この木からは、その繊維を取って使う他に、果実を取って便秘の際に下剤として飲んだ(美幌)。