植物編 §195 ホザキシモツケ Spiraea salicifolia L.
(1)itosinni イトシンニ 茎 ⦅A千歳⦆
注1.――語源はよく分からないが、tosir(墓穴)に関係ありそうである。tosin-niがtosir-ni(墓穴の・木)だとすれば、この木の枝条で墓穴の底を掃いたり、それを覆い柴に使ったりした土俗に基づいた名称である。またtosin-nit[tosir(墓穴)nit(串)]だとすれば、死体を包んだむしろのほどけるのを防ぐために使う止め串に、この木を使う土俗に基づいた名称と考えられる。それがito(糸)sinne(のような)ni(木)と解されるようになって、itosinniの形ができたのかもしれない。
(2)sinkep シンケプ [止め串?] 茎 ⦅美幌、屈斜路、足寄⦆
注2.――敷きむしろでも死体を包んだむしろでも、むしろを止める「止め串」をsinninup[sir(眼前の物)ninu(縫う)p(もの)]と言い、またketとも言う。ketは「突っ張る」「支える」ということで、あるいはそのまま名詞化して「突っ張り」「支え」の意味にもなる。ketはもとsinket[<sir-ket]とも言い、それからsinkepになったのではなかろうか。
(3)sunkep スンケプ [<sinkep] 茎 ⦅美幌、屈斜路⦆
(4)nitat-sinkep ニタッ・シンケプ [湿地の・止め串] 茎 ⦅A沙流・千歳・空知⦆
(5)nitatas ニタタシ [<nitat(湿地)-has(灌木)] 茎 ⦅名寄⦆
(参考1)これでほうきを作ったり、止め串を作ったりした。鮭を開いて乾かす時の突っ張り串(cep-makpa-ni魚・開く・木)にもした(各地)。
(参考2) 他に、sinkepと言われるものに、エゾヤマハギ(§183)、ホザキナナカマド(§222)等がある。