植物編 §253 フクジュソウ Adonis amurensis Regel et Radd.
(1)kunaw クナウ 花 ⦅様似、荻伏⦆⦅A沙流・鵡川・千歳⦆
(2)kimun-kunaw キムン・クナウ [山の・クナウ] 花 ⦅A沙流⦆
注1.――タンポポをも「クナウ」と称する。それで、それと区別するために、フクジュソウには「山の」という限定詞をつける。
(3)ciray-apappo チライ・アパッポ [イトウ・花] 花 ⦅美幌、屈斜路⦆
注2.――この花が咲きだすとまもなくイトウが川へ上って来る。それで部落の人々はそのつぼみのふくらみを見てイトウ漁のしたくにかかったのである。
(4)ciray-urep チライ・ウレプ [イトウ・いちご] 果実 ⦅美幌、屈斜路⦆
(5)ciray-kina チライ・キナ [イトウ・草] 茎葉 ⦅美幌、屈斜路⦆
(6)tututeh トゥトゥテヘ [tutut(ツツドリ)e(食う)p(もの)] 果実 ⦅白浦⦆
(7)tututehka トゥトゥテヘカ [tutut(ツツドリ)e(食う)kah(=kahkah果実)]
(8)tututeh-kina トゥトゥテヘ・キナ [ツツドリの食い物の生ずる草] 茎葉 ⦅白浦⦆
(9)tututehka-kina トゥトゥテヘカ・キナ [ツツドリの食う果実の生ずる草] 茎葉 ⦅白浦⦆
注3.――tutut-e-kahがtutut-ehkaになったのは、これをtutut(ツツドリを)ek-ka(来ら・せる)kina(草)とする民衆語源解による。
注4.――ツツドリは、カッコウと共に、漁兆に関係をもつ鳥である。白浦では、カッコウが後に鳴く年は漁があるけれども、ツツドリが後に鳴く年は不漁だという。それについて、次のような由来談が伝えられている。
カッコウとツツドリは夫婦の神である。カッコウが男で、ツツドリが女だ。この夫婦の神は、神の国では、魚の出る家の中に住んでいる。春になって、女の神が先に出ると、男の神はあわててその後を追っかける。その際、あまりあわてて戸もろくに閉めずに飛び出すので、その年は魚がたくさん捕れるのである。反対に、男の神が先に出ると、女の神は後をていねいに閉めてくるから、その年は不漁になるのである。
白浦ではツツドリは次のように鳴く。
cepoh! tutuh 魚が多い! トゥトゥ!
cepoh! tutuh 魚が多い! トゥトゥ!
北海道日高国二風谷では次のように鳴く。
tutut ツツドリ
yase 綱引け
cikorpet 里川に
cep ot 魚がいっぱい
胆振国幌別では次のように鳴く
Sikot-pet シコッペッ川
cep ot 魚みちくれば
Tus-pet トゥシペッ川
cep sak 魚いずなりゆき
Tus-pet トゥシペッ川
cep ot 魚みちくれば
Sikot-pet シコッペッ川
cep sak 魚いずなりゆく