植物編 §263 アキカラマツ Thalictrum Thunbergii DC.
(2)iranrayke-kina イランライケキナ [i(それの)ram(心)rayke(殺す)kina(草)] 茎葉 ⦅真岡⦆
注1.――樺太では、誰か怒っている人の所へ行く際、あらかじめイケマの根を用意して行って、その家の近くまで行ったらそれを噛んで
e-ramu お前の心
an-rayke 殺したぞ
と唱えた(§74)。おそらく、アキカラマツの根にも同様の用途があって、その際上記のごとき呪文が唱えられたのであろう。なお、§188等参照。
(3)“Kiorokushi-kina” 『キオロクシキナ』 ⦅G 樺太⦆
注2.――辞書には、Kiorokush-kina『キオロクシキナ』となっている。仮名表記の部分が『キオロ……』となっていることによって種本が分かるのである。辞書には別に、Kirorokush-ni『キロロクシュニ』、とも出ている。
(参考)気の短い人、気の荒い人、酒くせの悪い人、疳の強い子に、この種実を飯に混ぜて食べさせた(真岡)。その際、ひそかに“e-ramuan-rayke”「お前の心、殺したぞ」という呪文を唱えることになっていたかもしれない(上記注1参照)。樺太植物調査概報には、次のように出ている。“根ハ甚タシキ苦味アリ。土人腹痛ノトキ湯ニ入レ飲用ス。又下剤ニ用ユ。踏枝ヲ為セルトキ此根ヲ附ケ置クトキハ自カラ抜ケ出ツルト云フ。葉ハ打身等ニ効アリト云フ”(G、p.55)。