アイヌと自然デジタル図鑑

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アイヌ語辞典

植物編 §305 ケヤマハンノキ Alnus hirsuta Rupr

(1)kene ケネ [<kem-ni「血(の)・木] 茎 ⦅北海道全地⦆
 注1.――この木は皮を煎じると赤い液が出る。それをアイヌは血と考え、多量に出血のあった際(例えば月経時や産後など)補血の意味でそれを服用する。それでkem-ni「血の木」と言ったのであろう。千島ではken-niと言ったとある(鳥居龍蔵「千島アイヌ」)。
 注2.――kene-ni(B)「ケネニ)(D)などは正しくない。keneとだけ言えばもうni(木)だと分かるので(keneという語そのものの中に語源的にすでにniという語が含まれているので)その上niをつける必要はないのである。

(2)ihurekani イフレカニ [i(物を)hure(赤く)ka(する)ni(木)] 茎 ⦅白浦
 注3.――物を赤く染めるのに使ったからこの名がある。

(3)『ヤヤンケネ』 ⦅東蝦夷日誌⦆
 注4.――yayan(普通の)kene(ハンノキ)の意味である。
(参考)この木の内皮を湯に浸しておいたり、あるいは煮たてたりすると赤色の液が出る。北海道でも樺太でもそれで物を赤く染めた。それで「イフレカニ」(物を赤くする木)というのである。アイヌはこの赤色の浸出液を血と考え、補血の意味で産前産後あるいは月経時あるいは肺病の際などに服用した。また、結膜炎やトラホームなど目の中が赤くなった際、やはりこの赤色の浸出液で洗った。横腹が痛む時もこの木の木片を煎じて飲んだ(白浦)。魚肉に中毒した時もこの皮を煎じて飲んだ(名寄)。

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