アイヌと自然デジタル図鑑

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アイヌ語辞典

植物編 §307 ミヤマハンノキ Alnus Maximowiczii Call.

(1)hani ハニ [<han-ni、日本語のハンの木の音訳か] 茎 ⦅白浜

(2)horkew-kene ホルケウケネ 茎 ⦅長万部⦆⦅A十勝石狩千歳沙流
 注.――horkew-keneは「オオカミ(の)・ハンノキ」の意味だが、もとは恐らくporo-kewe-kene「大いに・悪魔を追う・ハンノキ」の意味だったらしい。

(3)kamuy-kene カムイケネ [“神の・ハンノキ”] 茎 ⦅A天塩上川

(4)iwa-kene イワケネ [“奥山の・ハンノキ”] 茎 ⦅穂別
(参考1)この木は、しばしば木幣に用いた。沖狩りに行く時など、90cmくらいに切った短いものを幾本か用意して行き、沖で幣に削って流した(白浦)。天塩、北見でも沖の神へ捧げる幣はこの木で作った。斜里でもアザラシ狩りに出る時はこの木で短い幣を作って持って行き、漁があっても無くてもそれを沖に流して来た。
 樺太では、この木の枝で魔除けの人形を作って子供の着物の袴または帯の所に結びつけておく。それを白浦では「セニシテ・ニポポ」seniste-nipopo[si-e-niste(自分が・それによって・堅固になる)ni-po-po(木の・小さな・子)]と言い、鵜城ではkene-nankorope[kene(ハンノキの)nan-koro-pe(顔・もつ・者)]という。
(参考2)ハンノキと沖の神との関係について、美幌に次のような説話が伝えられていた。――Mosir-kar-kamuy, mosir kar otta, kene iyumpe kat tek, oterke kor, osarun etari, ororun etari. e-sampeataykap, atuy ka ene osura a-kusu, etaspe ne an wa, too oman. orowano, etaspe ari re-kor-pe, atuy oske ta okay, kami kay kene nepkor hure. [国土を作った神が、国土を作った時、ハンノキの炉ぶちを作って、踏むと、下座の方に頭を持ち上げ、上座の方に頭を持ち上げる。腹を立てて、海の上に投げたら、etaspe(トド)になって、ずうっと行ってしまった。その時から、etaspe “頭を持ち上げる者”という名を持つ者が、海の中にいて、その肉もハンノキのように赤い。]

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