植物編 §320 マルバノバッコヤナギ Salix Hultenii Flod.
(1)cipni-susu チプニ・スス [cip-ni(舟・木)susu(ヤナギ)“舟材になったヤナギ”] 茎 ⦅名寄⦆
注1.――ナナカマドのinaw-ne-ni(幣・になる・木)がinawni-ni(幣材・木)となったように(→§223、注4)、これも初めcip-ne-susu(舟・になる・ヤナギ)がcipni-susu(舟材・木)になったのであろう。
(2)cip-susu チプ・スス [舟・ヤナギ] 茎 ⦅A十勝⦆
(3)meromay メロマイ [<mera(葇荑花序、いわゆるネコ)oma(つく)ni(木)] 茎 ⦅名寄⦆
(4)meraomani メラオマニ [mera(ねこ)oma(つく)ni(木)] 茎 ⦅A天塩⦆
(5)meremay メレマイ [<meromay] 茎 ⦅真岡、白浦⦆
(6)menemay メネマイ [<meremay] 茎 ⦅真岡、白浦⦆
注2.――日本語の女の子が北海道アイヌに入ってmenokoとなり、それが樺太アイヌに入ってmeroko、mereko、meneko等の形になまる。meraomaniがmeromaniからmeromayになり、それからmeremay、menemay等の形に変わるのも同じような例である。
(7)menemani メネマニ [<mera-oma-ni] 茎 ⦅真岡⦆
(8)nupkaka-susu ヌプカカ・スス [nup(野)ka(原)ka(の上の)susu(ヤナギ)] 茎 ⦅屈斜路⦆
(9)si-susu シ・スス [大きな・ヤナギ] 茎 ⦅名寄⦆
(10)siw-susu シウ・スス [にがい・ヤナギ] 茎 ⦅A千歳・有珠⦆
(11)susu-at スス・アッ [ヤナギ・ひも] 内皮の繊維 ⦅幌別⦆
(12)susu-kah スス・カハ [susu(ヤナギ)kah(<kap 皮)] 樹皮 ⦅白浦⦆
(13)ah-susu アハ・スス [ひも・ヤナギ] 茎 ⦅落帆⦆
(14)tusnisusu トゥシニスス [tus(縄)ne(になる)susu(ヤナギ)] 茎 ⦅A沙流⦆
(参考)この皮の繊維は強いので、それを3cm位の幅に裂いてつなぎ合わせ、サケマスを結束する「にあハ」niah[ni(木)at(ひも)]に使った(白浦)。また、これで縄をなったり、夏はく「シトゥ・ケリ」situ-keri(木皮で編んだ靴)を作ったりした(美幌、屈斜路)。また、この木で舟も作ったらしいことは、その名称から察せられる。