植物編 §325 サイハイラン Cremastra variabilis Nakai
(1)nimakkotuk ニマクコトゥク [nimak(歯)ko(に)tuk(つく)] 塊茎 ⦅長万部、虻田、幌別、白老、鵡川、穂別、平取、名寄⦆
(2)imakkotuk イマクコトゥク [imak(歯)ko(に)tuk(つく)] 塊茎 ⦅東静内、荻伏、様似、足寄、屈斜路、美幌⦆
(3)imahkotuh イマハコトゥフ [<imakkotuk] 塊茎 ⦅白浦⦆
(4)imahkokutu イマハコクトゥ [<imahkotuk] 塊茎 ⦅真岡⦆
注.――imahkokutuになったのはkutu(中空円棒状の茎)への連想から。
(参考)塊茎を煮て魚油またはサケマスの筋子を潰したのを付けて食べた。焼いても煮てもまた生でも食べた。粘るのを噛んでいるうちに甘みが出て来るという(幌別)。塊茎を煮て柔らかくなった時、火から下ろしてよく練って油を加えてどろどろにして食べた(白浦)。塊茎の乾燥したものを噛んで、腹痛の時、へその所に塗った(真岡)。塊茎を生のままで、あるいは焼いて潰して乾かしておき、冬になって、しもやけ・ひび・あかぎれ・あるいは傷に、それを粉末にして湯で練って塗布した(屈斜路、美幌、真岡、白浦)。キハダの果実をすり潰して練り合わせると、一層よく効く(幌別)。塊茎を粘着剤に用いたり、あるいは煮て搗いて丸めて子供らの手まりにした(幌別)。「土人は此紫蘭の根を以て漆器磁器の破れを継ぐ」(松浦竹四郎、知床日誌)