植物編 §381 チシマザサ Sasa kurilensis Makino et Shibata var.genuina Nakai
(1)huru フル 葉 ⦅白浦、真岡⦆
注1.――もとの形はhur(またはur)であるが樺太南部の方言では単独のrを末尾音に許さぬので開音節に発音してhuruとしたのである。
(2)huru-amam フル・アマン [笹葉(の)・穀物] 種実 ⦅白浦、真岡⦆
(3)huras フラシ [<hur-has 笹葉(の)・枝条] 枝葉 ⦅美幌、屈斜路⦆
注2.――hurasは語源から見ても初めは枝葉を合わせて称したものらしい。枝葉から葉だけ取り立てて言う場合にuras-ham[枝葉(の)・葉]と言った例もある。→(5)
(4)uras ウラシ [<huras] 枝葉 ⦅網走、美幌⦆⦅C,p.55石狩国樺戸郡、p.96後志国余市郡、p.397天塩国留萌郡、p.459 北見国紋別郡⦆
(5)urasam ウラサム [<uras-ham→注2] 葉 ⦅名寄⦆
(6)uripe ウリペ [<ur-ipe 笹葉(の)・食物] 種実 ⦅北海道全地⦆
注3.――古い語だったと見え幌別のように別の語を使う所でもこの語は通じる。
(7)kamuy-amam カムヤマム [神(の)・穀物] 種実 ⦅幌別、穂別、長万部⦆
(8)hutat フタッ [<huttat<hur-ta-p 笹の枝葉を・ちぎった・もの] 葉 ⦅長万部、幌別、穂別⦆
(9)iktara イクタラ [ik(節)tara(連続している)] 茎 ⦅C、p.459 北見国紋別郡⦆
(10)ikitara イキタラ [iki(その節)tara(連続している)] 茎 ⦅美幌、阿寒⦆⦅C,p.337 釧路国阿寒郡、p.375 根室国野付郡⦆
(11)ikutara イクタラ [同上] 茎 ⦅美幌⦆
(12)yayan-top ヤヤントプ [普通の・竹] 枯茎 ⦅A十勝⦆
(参考)笹の枝葉は、束ねてi-muye-uras[それを・束ねた・笹の枝葉]を作り、それで屋根や側壁を葺く(そういう家をuras-ciseという)。葉は悪魔払いの手草(uras-takusa)に用い、子供は笹舟に用いる。魚に中毒した時はそれを黒焼きにして飲み、ニシンの油の渋みを抜くにそれを用いた。種実は炊いて飯にしたり、粉にして団子にしたりした(幌別)。