アイヌと自然デジタル図鑑

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アイヌ語辞典

植物編 §402 アワ 粟 Setaria italica Beauv.

(1)aynu-amam アイヌ・アマム [→注1] 子実 ⦅幌別沙流
 注1.――米をsisam-amam“日本人の・穀物”という。それに対して、アワ及びヒエをaynu-amam“人間の穀物”というのである。

(2)sirun-amam シルナマム [sir(土地)un(の)amam(穀物)] 子実 ⦅幌別
 注2.――米をsisam-amamというのに対する。sisamは、もとsi-sam“自分・のそば”の義で、それから“隣国”“異国”となり、更に“隣国人”“異国人”すなわち“日本人”の意味になった。だからsisam-amamは“隣国の穀物”“異国の穀物”の義にも解せられ、それに対してアワ及びヒエを“土地の穀物”“本土の穀物”と言ったのである。

(3)siru-amam シル・アマム [→注3] 子実 ⦅美幌
 注3.――もとはsirun-amam“土地の穀物”だったに違いない。ところが日本文化に接するようになってから、本来は“土地の”の意味だったsirunという語が、“貧しい”“粗末な”“つまらぬ”という意味に変わってきて、“土地の”という本来の意味が分からなくなった。そこに民衆語源解が働いてsiru“こする”などへの連想からsiru-amamとなったのであろう。

(4)munciro ムンチロ 子実 ⦅幌別沙流

(5)minciro ミンチロ 子実 ⦅東静内荻伏
 注4.――ヒエをpiyapaというのに対して、それと区別する時アワをmunciro、minciroというのである。
 以上の総名に対して、幌別では次のような品種の区別に応じる名称もあった。

(6)pakkay-amam パッカイアマム、パッカヤマム [“子を負うている・穀果”の義] 子実 ⦅幌別
 注5.――幌別の和人方言でコモチアワと称するもの。

(7)hepur-amam ヘプルアマム、ヘプラマム [“むく毛の・穀果”の義] 子実 ⦅幌別
 注6.――幌別の和人方言でクマアワ。

(8)eparo-amam エパロアマム 子実 ⦅幌別
 注7.――和人方言ネコアシ。

(9)hure-amam フレアマム [“赤い・穀果”の義] 子実 ⦅幌別
 注8.――和人方言オサジアワ。

(10)kompukarusi コンプカルシ [kompu(コンブ)kar(刈る)usi(時)] 子実 ⦅幌別
 注9.――コンブ刈る時期は8月頃である。その頃実る。ワセアワ。

(11)muri-kunne ムリクンネ [muri(その果皮)kunne(黒い)] 子実 ⦅幌別
 注10.――和人方言イシアワ。

(12)etuy-amam エトゥイアマム、エトゥヤマム [e(頭、穂先)tuy(ぷつりと切れている)amam(穀果)] 子実 ⦅幌別
 以上の内、(6)(7)(8)(9)(10)は“もち”(「リテンペ」ritempe[riten(やわらかい)-pe(もの)]で、(11)(12)は“うるち”(「シプシケプsipuskep[sipuske(ふくれる)-p(もの)]である。
 その他、次のような名称がある。(→(13)〜(16))

(13)e-petke-munciro エペッケムンチロ [e(頭、穂先)petke(割れている)munciro(アワ)] 子実 ⦅平取
 注11.――六角アワと称するもの。

(14)pusi-tanne-munciro プシタンネムンチロ [pusi(その穂)tanne(長い)munciro(アワ)] 子実 ⦅平取
 注12.――穂長アワと称するもの。

(15)nitne-munciro ニッネムンチロ [nitne(かたい)munciro(アワ)] 子実 ⦅バチラー、アイヌ人とその説話⦆

(16)pit-ne-munciro ピッネムンチロ [pit(小石)ne(状の)munciro(アワ)] 子実 ⦅バチラー、アイヌ人とその説話⦆

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