アイヌと自然デジタル図鑑

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アイヌ語辞典

植物編 §418 イチイ Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.

(1)rarmani ラルマニ 木 ⦅北海道全地⦆

(2)raramani ララマニ 木 ⦅白浦

(3)tarmani タルマニ 木 ⦅多来加

(4)kuneni クネニ [ku(弓)ne(になる)ni(木)] 木 ⦅荻伏

(5)aeppo アエッポ [aep(我らの食う物;a-我ら、e食う、-pもの)-po(指小辞)] 果実 ⦅幌別

(6)『タルマニフレップ』 ⦅藻汐草⦆
 注1.――tarmani-hurep(イチイの木の実)か。

(7)『ランヌマニ』 ⦅箱松蝦深秘考⦆
 注2.――rannuma-ni(眉毛の・木)か。

(8)raramani-tureh ララマニ・トゥレヘ 果実 ⦅白浦
(参考)果実は、「アエッポ」(小さな食物)という名が示すように、盛んに生で食べた。ただし、うまいからというばかりではなく、それを食べることが健康によいという信仰があったらしく、肺や心臓の弱い人には大いにすすめて食わせたという(幌別)。
 樺太でも、脚気の薬として、また利尿剤として、この果実を生食したとある(H、p.13)。
 樹皮は、染色に用いたらしい。石狩付近のアイヌは、物を赤く染めるのにイチイの内皮と共に煮たとある(河野広道、アイヌの織物染色法、p.70)。
 樺太では、この内皮を乾燥して保存しておき、下痢止めに煎じて飲んだという(H、p.36)。肺病喀血には、炉の中に穴を掘ってその中にこの木の葉を入れ、その上に鍋を伏せてその上で火を焚くと、穴の中に葉の黒焼きが出来るから、それを取って木綿袋に入れ、日常煎じて飲んでいると病気がよくなるという(ibid.、p.40)。
 木は、「ク・ネ・ニ」(弓・になる・木)という名が示す通り、それで弓を作った。その他、小刀の柄だとか酒箸だとかの小器具を作った。柱にもしたという(D、屈斜路)。またその心材をアツシの染料にもしたという(E、p.591)。

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