植物編 §447 エブリコ Polyporus officinalis Fr.
(1)siw-karus シウカルシ [にがい・キノコ] ⦅A⦆
(2)umma-siwkarus ウンマシウカルシ [馬(の)・にがいキノコ] ⦅あいぬ医事談⦆
(3)kuy-karus クイカルシ [グイマツ(の)・キノコ] ⦅A⦆
(4)ni-tomtom ニトムトム [木(の)・こぶこぶ] ⦅美幌、屈斜路⦆
(5)kuyopohko クヨポホコ [<kuy-o-pok-ka-o-p グイマツ(の)・尻・の下・の所・にいる・者] ⦅白浦⦆
(6)kuyomohko クヨモホコ [<kuyopohko] ⦅真岡⦆
(7)kuyepohko クイェポホコ [<kuyopohko] ⦅落帆⦆
(8)epuruku エプルク ⦅白浦⦆
(参考)このキノコについて宮部金吾博士は次のごとく述べておられる。“落葉松・エゾマツの枯損木につくサルノコシカケである。表面は灰色で、中身は真白で、甚だしく苦みがある。シイボルトが蝦夷地に多く産することを知り、これが寝汗の薬として効力があることを知らせたため、年々幕府が松前から献上を命じたものである。煎汁は胃病に効あり、また体の痛い所や、馬の鞍ずれにつける。土人はまた発汗の剤となす”(『アイヌの薬用植物について』、p.13)。
関場不二彦博士の『アイヌ医事談』(p.56)によれば、アイヌは火傷・創傷にこれを噛んでつけ、胃病にその煎剤を服用し、眼病にもそれを用いるとある。
樺太の白浦では、このキノコの乾燥したものを粉末にして腹痛の時に飲んだ。また内部の柔らかい部分を少量つまんで火打石の上にのせ、火口に用いた。北海道北部の屈斜路でも同様だったという。